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【インタビュー|vol.4】火田詮子さん


火田詮子

火田詮子(俳優)

18歳のとき、名古屋のアンダーグランド演劇界の草分け「シアター36」に参加。演劇にとどまらず、映画、朗読、音楽ライブなど、その後45年あまり、休むことなく舞台に立ち続け、今に至る。

 

❘演劇を始めたきっかけは?

 私の高校時代は学生運動の最後の世代なんですよね。敷かれたレールを走るのはいけないんじゃないかって、デモに出たりしてたんです。その頃、時代的にいろんなものが一気に押し寄せてきていて、自分も映画を作ったり、バンドをやったりしていた中で、最後に残ったのがお芝居でした。その時代の演劇は今まで作られてきたものを壊すという大きい動きがあって、劇場から飛び出したり、リアリズム演劇ではない表現をしたり…そういう時に飛び込んでしまったので、演劇をやろう、という感じとは少し違ったかもしれないですね。自分の生き方の中で、世界や時代に「NO」と言いたかったんです。その方法はたくさんあって、その中で私にとっては演劇が一番技術が要らなかった。私にとっては生きることが芝居をすることであって、職業とか技術を磨くというものではなかったんです。

❘気をつけていることは?

 私は自分のことを素材だと思っていて、文体を持った劇団や作品が好きだけど、自分自身に文体はないんです。だから演出の言うことを素直に聞きます。まな板の上の食材でいいと思っています。演出家が作りたい世界に寄り添うのではなく、世界観を自分で体験するというか。

 あとは声ですね。演技をするときに、自分の中で常に裏切り続けるようにしてます。こうだと思ったことと違う声を出したり、違う動きをしたりは無意識にやっています。

❘裏切り続ける、というのはとても不思議な感覚ですね。

 台本を読んだ時のイメージに近づけるんじゃなくて、その場で出てきたものに対して、あえて違う方向から返してみたり。予習をして、この役はこういう風だから…ということは、あまりしたことがないですね。いつでも自分は素人だと思っていて、自分に役者道みたいなものを作らないようにしています。

❘自分の武器はこれだ!というものは?

 自分で言うのもなんなんですが、「素直さ」だと思います。複雑な演劇観は持っていないので。稽古中に演出に言われたことは素直に聞きます。なにやっても火田詮子だよねと言われてしまうこともあるけれど、自分ではそうやっています。「上手い」よりは「かっこいい」って言われたいんですよね。カタマリでガッと伝えたいというか。だからセリフは大事にしてるんですけど、ちゃんと言えないんですよね。自分の中でその時にできている流れを素直にそのまま出してしまうというか。稽古中にセリフに詰まったりしても、なんとなくそれで流してしまうからよく怒られます(笑)。

❘こうなりたい、という目標にした人はいますか?

 ないですね。この人好きだなぁと思うことはあるんですけど、真似したい、こうなりたい!って思ったことは一度もないです。幸か不幸か、自分が演劇を始めたときはみんな同世代ばかりで、あまり先輩がいないんです。もちろん黒テントとか赤テントとかも見てますから、いいなと思う人が全くいないわけではなかったんですけど、そういう魅力は訓練や練習で身につくものではないと思っていたので、意識的に目標にした人というのはいないですね。

❘ご自身の中での目指しているところもない?

 そもそも、ここを目指すという到達点に向かってお芝居をしているわけではないですね。ただ、若い頃に無我夢中でやっていたころに比べると、芝居に対する向き合い方は変わってきましたね。座右の銘が、本からもらった言葉で「心はアマチュア、腕はプロ」というのがあって。何かを求められた時に自分のなかの引き出しから何かしら出せるだけの技術は培ってきました。でも、本質は永遠にアマチュアであるというか、素人であるというか。演技の引き出しや腕なんて何ほどでもなくて。ある意味、どうやったら楽しくやれるかということかもしれない。

❘今後の活動予定は何かありますか?

 現在決まってるのは5月の劇団クセックACTの公演です。その前にひょっとしたら2月に同じ劇団の番外公演があるかもしれないです。私にとってはホームグラウンドだと思っている劇団の公演なので、是非観て頂きたいです。

❘火田さんと言えばクセックさんというイメージがありますので、とても楽しみです。本日はいろいろと興味深いお話を聞かせて頂きありがとうございました!


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